「漢方」とは医学の名称?
私たちは「漢方薬」のことを「漢方」と呼ぶなど、漢方と漢方薬を同じものとして捉えがちですが、実はそうではありません。
漢方とは東洋医学の医療体系のひとつで、その治療法のひとつに漢方薬が用いられているのです。
ちなみに漢方とは食養生や鍼灸、薬膳、整体などといった中国から伝わった医学を基盤としたもの。奈良時代に伝来してから日本の気候や風土、日本人の体質や暮らしに合わせて独自に発展・確立してきたのだそうです。漢方と聞くと中国独自のものかと思いますが、実は日本の伝統医学とは少し意外な気もしますね。
漢方はホリスティックに人を見る
「木を見て森を見ず」という例えがあります。細かい部分に集中し過ぎて、全体像や本質を掴まないことですが、西洋医学の例えとして使われることがあります。逆に、全体(ホリスティック)をみる医学が、漢方を含む東洋医学。つまり「病気ではなく病人をみる」こと、病気だけに焦点を当てるのではなく全体のバランスを重視するのです。
そもそも私たちは体質や体格、ライフスタイルも違うのですからマニュアルありきの治療法だけではなく、その人を構成する様々な要素からホリスティックにみるというのは理に適っているはずなのです。
そのため体質改善に繋がるので、病名がついていない未病やプチ不調などにもアプローチできるのが嬉しいですね。
「食べるくすり」、薬膳という考え方
「医食同源」というように、日ごろからバランスのよい食事を心がけると、病気を予防したり治療効果が期待できるとされています。
この考えがもとになった食事が、「薬膳」という食養生。つまり毎日の食事を季節や体調に合ったものにするなど、気を付けることで不調が予防・改善されたり健康を維持できるのです。
これは特定の食材を極端に制限したり、集中的に摂取することではなく、旬の食材をバランスよく体調に合った調理法で食べるのが理想的ということです。
こんな不調にはこの食材や漢方薬を
特に月のサイクルで体調が不安定になりやすい女性にとって、リスクが少なく※体全体にアプローチする漢方薬や薬膳はぜひ取り入れたい習慣です。
では、それぞれの不調にどの食材や漢方が効果的か、少しご紹介します。
※漢方の考えで、改善する前に一度状況が悪化したと感じる「好転反応」や「瞑眩(めんげん)」などが出る可能性はありますが、これはよくなる過程で起きるもので約数日で治まるとされています。
(1)風邪
《食材》
●「梅干し」
平安時代には薬として食されていたという梅干しは、現代でも頼れる存在。疲労回復に効く「クエン酸」は血流を改善して免疫力を高め、梅干し特有の「酸っぱさ」は、食欲増進や殺菌効果もある唾液分泌を促すなど、風邪で弱った体に嬉しい効能がいっぱいです。
食欲がないときは梅干しに、番茶(三年番茶がオススメ)、伝統製法で作られた醤油数滴で作る「梅醤番茶」を。内臓を強化したり活力の増進、冷えの改善などが期待できます。材料はできるだけ有機や無農薬など栽培法にこだわったのものを選んで。
《漢方薬》
●「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」
風邪のあと、セキがだらだらと続く。そんなときは喉を潤し、せきを鎮める効果があるといわれる「麦門冬湯」がオススメです。
●「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」
水っぽい鼻水が止まらない鼻風邪、アレルギー性鼻炎、気管支喘息にも効果があるといわれています。
(2)冷え(冷えからの婦人系トラブル)
《食材》
●「玄米・雑穀米」
栄養が詰まった糠や胚芽を取り除いた白米は、体を冷やす作用があります。体を温めたいなら玄米がオススメ。ただ体質的に合わなかったり食感が苦手な人は麦、粟、ヒエなどが入った雑穀米を試してみては。プチプチとした食感も楽しく、美味しいですよ。
●「自然の食材」
精製食塩、白砂糖、化学調味料、食品添加物など、精製や加工された食品をなるべく摂らないことで、体を冷えから守る方法も。野菜ならオーガニックなど栽培にこだわったもの、調味料なら伝統製法のものを積極的に選びましょう。
ほかにも土の中で育つ根菜類や、豆類、発酵食品など体を温める性質を持つ食材はたくさん。冷えを改善すると血や気が巡るため、生理トラブルから解放されたという人も多いです。薬だけに頼らず、食事で養生する価値は大いにありますよ。
《漢方薬》
「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」
血行を良くし、のぼせや冷えを改善。具体的には、生理不順や生理痛、更年期障害などに効果的です。特に下半身の冷えが辛い人に。
●「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」
冷え性や貧血の症状が辛い人に。血行を良くして体を温め、貧血症状を改善してくれます。
(3)美肌
《食材》
●「発酵食品」
味噌や納豆などの発酵食品は、腸内細菌を効果的に増やし腸内環境を整え、肌荒れの原因でもある便秘を改善してくれます。ほかにも良い腸内環境を保つことのメリットは枚挙にいとまがないほど!
つまり発酵食品の宝庫である和食は、理想的な美肌食ともいえます。
●卵、牛乳、アーモンド、レバーなど「ビタミンB2の食材」
「代謝のビタミン」としても知られるビタミンB2 。肌や髪、爪などの細胞の再生や主に脂質の代謝を促し、健やかな肌を保つことができます。
●卵、さんま、まぐろ、バナナなど「ビタミンB6の食材」
タンパク質の代謝を助け、皮膚や鼓膜を作る働きがあります。不足すると様々な代謝異常が起き、特に肌のターンオーバーが乱れることでニキビなど肌荒れの原因に。
●パプリカ、ブロッコリー、柑橘系など「ビタミンCの食材」
メラニン色素の生成を抑えたり、コラーゲンの生成をサポートするなど、美容に欠かせないビタミンC。シミやそばかすが気になる人は特に摂取したい栄養素です。ただ一度に大量に摂取しても吸収し切れないため、「こまめに毎日」を心がけて。
《漢方薬》
●「桂枝茯苓丸料加薏苡仁(けいしぶくりょうがんりょうかよくいにん)」
血の巡りを良くし、肌に栄養を行き届かせる作用があり、ニキビやシミなどの肌トラブルを改善してくれます。
まとめ
漢方薬や漢方について掘り下げてみましたが、いかがでしたか。
このような漢方の養生は日頃から心がけておくと、内側からの健やかな体作りに繋がります。また女性は特に、月の症状が軽くなるなど顕著な変化があるかもしれませんよ。
また最近はドラッグストアでも豊富に扱いがありますが、漢方薬についてはあくまで薬なので、漢方薬剤師さんなどに相談して、より効果的な処方を受けることがオススメです。