ビジネス上のコミュニケーションの多くは、名刺交換から始まります。
お互いの役職や名前を明かしあいさつを交わすこのやり取りは、信頼関係のスタート地点とも言える大事な場面です。
新人研修でマナーを教える会社もありますが、それ以降は場数を踏みながら先輩や上司の振る舞いを見て身につけていくことが多いですよね。
長年我流を続けているうちに名刺交換への意識がだんだんゆるみ、知らないうちに失礼な行動をとっているかもしれません。
そこで今回は日本のビジネスにおける名刺の扱い方を基本からおさらいします。
名刺交換の順番
1対1で名刺交換をする際は、目下から先に名刺を渡すのが基本です。
目上か目下かは企業間の関係で判断します。たとえば営業で客先に訪れた場合、客先(発注側)が目上で自社(受注側)が目下です。
それでは、以下のようなケースではどうでしょうか?
商談の場に複数の人物がいて、それぞれの会社内にも上下関係があります。
自社(受注側):自分、自分の上司
客先(発注側):担当者、担当者の上司
この場合は次のように名刺交換を進めます。
1.自分の上司が担当者の上司とあいさつする
2.自分の上司が担当者とあいさつする
3.自分が担当者の上司とあいさつする
4.自分が担当者とあいさつする
どのやり取りもすべて、受注側の立場である自社の方から先に名刺を渡します。
自分の上司が客先の2名とあいさつを終えるまで待っている必要はなく、同時並行で進めてかまいません。
名刺交換をする時の姿勢
名刺交換は座ったままやテーブル越しを避け、相手の正面に立って行いましょう。
大切なビジネス相手との初めてのあいさつなので、しっかり顔を見て会話をし、好印象を心がけたいところです。
複数人いる場合は、名刺交換をする順番に並んでおくとスムーズに進められます。
スムーズな名刺交換は事前の準備から
続いて自分から相手へ名刺を渡す際の注意点ですが、まずは商談を始める前に必要な枚数が確保できているか確認しましょう。
部署や役職が変わったばかりの場合は、最新の名刺になっているかもチェックが必要です。
ポケットや財布に直接入れて持ち歩くことはせず、名刺入れに入れて携帯します。
小さな名刺入れを適当に鞄に放り込んでいると、いざという時素早く取り出せません。
「鞄の内ポケットの右から何番目」のように、収納場所を決めておくのがオススメです。
自分の名刺の渡し方
名刺入れの上に自分の名刺を1枚乗せて両手で持ち、相手から文字が読みやすいように構えます。
そして「(会社名)(部署・役職)の(氏名)です。よろしくお願いいたします」と言いながら、相手の方へ差し出します。
つい手元に視線を集中させがちですが、相手の顔を見て笑顔であいさつをすると印象がアップします。
本来避けるべきことですが、忘れたり補充が間に合わなかったりして名刺が渡せない場合は、「申し訳ありませんが、ただいま名刺を切らしておりまして……」とお詫びし、口頭で会社名や役職、名前を名乗ります。
実際には持ってくるのを忘れていたのだとしても「切らしておりまして」で乗り切りましょう。
あらためて名刺を渡したい相手には、会社に帰ってから感謝とお詫びの手紙を書き、名刺を添えて郵送します。
名刺の受け取り方
相手に名刺を渡されたら、自分の名刺入れをお盆にして両手で受け取り、「頂戴します」と一言添えます。
この時、会社のロゴや相手の名前が指で隠れないようにしてください。
相手の名刺をさっさと名刺入れにしまってしまうのは、あまり印象が良くありません。
胸元で高めに持ったまま、「△△さんですね」などと短い会話を交わすと良いでしょう。
顔と名刺を見比べながら会話することで記憶にも定着しやすくなります。
相手の名字の読みがわかりにくい場合は、「何とお読みすればよろしいですか」など、さり気なく確かめておくとのちのち困りません。
相手側に複数人いる場合は、先に受け取った人の名刺を名刺入れの下に回してから、次の人の名刺を受け取ります。
同時に名刺を交換する場合
「目下の立場から先に名刺を渡す」というマナーが定着していることから、お互いが謙遜しあって「私から先にごあいさつを」、「いえいえ私から」と譲らない場面が起きてしまうことがあります。
そういった無用な譲り合いを避けるために行われているのが、同時に名刺交換をする方法です。
1.お互いに口頭で名乗る
2.右手に自分の名刺、左手に名刺入れを持って相手と対面する
3.低い位置から自分の名刺を差し出しつつ、名刺入れをお盆にして相手の名刺を受け取る
4.受け取ったらすばやく両手に持ち替える
相手が同時交換の姿勢に入っていたり、渡す順番で揉めそうな気配を感じたら、同時交換に切り替えましょう。
商談が始まってから
着席して商談が始まりそうな流れになったら、自分から見て左斜め前にもらった名刺を並べます。
複数人いる場合は、相手方でもっとも目上の人の名刺を名刺入れの上に乗せましょう。
ただし参加者が多いなど、人の顔と名前を一致させるのが難しいようなら、名刺入れは使わず着席順に並べても問題ありません。
こうしておくと、「××さんはどのようにお考えですか?」など、初対面の相手にもスマートに呼びかけることができます。
なお、参加者が机の上の名刺を片付け始めたら、「そろそろこの商談を終わりますよ」という合図です。
周囲の人の様子をうかがいながら自分も名刺入れに収納しましょう。
持ち帰ったあとも注意
名刺には氏名や役職名、個人のメールアドレスなどの情報が記載されているので、受け取ったあとも慎重に扱います。
会社に戻ったら名刺フォルダに収納するなど、こまめな整理を心がけましょう。
最近ではアプリやPCソフトのようにデータで管理する手段も充実してきました。
商談の日付や話した内容、見た目の特徴をメモしておくと、後日連絡をする際に思い出しやすくなります。
不要になったらシュレッダーにかけるなど、情報が流出しない方法で適切に処分してください。
まとめ
名刺は大切なビジネスアイテムであり、会社のメンバーとしての顔を証明する分身のような存在でもあります。
丁寧に取り扱うことで相手への敬意を示し、信頼関係を作る支えにしましょう。