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「平岡珈琲店」があるのは、Osaka Metro「本町駅」1番出口より徒歩3分ほどの場所。御堂筋を少し入ると、煉瓦造りのレトロなお店が見えてきます。
1921年から続く喫茶店
同店が開業したのは1921(大正10)年。2021年1月に創業100年を迎えた老舗の喫茶店です。
店主は小川清さん。祖父、父とお店を受け継ぎ、現在3代目です。
関東で醤油の醸造を行う商家の生まれだった祖父の小川忠次郎さん。ハイカラ好きで、「これからは外国の文化を積極的に取り入れなければ」とウイスキーやワイン、コーヒー豆の販売をスタートしたことが同店のはじまりです。しばらくして当時まだ珍しかったコーヒー1本に絞り、豆を売るためのサロンとして喫茶店をオープンさせました。
当時はコーヒー1杯15銭。今の価格にすれば1,300円〜1,500円ほどと高級だったこともあり、商社マンや商店主、文化人など好事家たちに愛されるお店でした。
そんな大人たちがコーヒーとともにこぞって注文したのがドーナツです。
これは、"日本初のカフェ"として有名な「銀座カフェー パウリスタ」で提供していたドーナツのレシピを、常連だった忠次郎さんが特別に教えてもらったものです。
口に入れるとほろっとほどけ、小麦の香ばしさが鼻から抜けるやさしい味わいのドーナツは、コーヒーとともに看板メニューとなったのです。
絞って淹れる、独特のコーヒー
「平岡珈琲店」のコーヒーは、しっかりとした苦味とコクがありながら、どこかすっきりとして、飲みやすいのが特徴です。これは、ペーパードリップやネルドリップなど一般的な抽出方法ではなく、ボイリングというちょっと独特な淹れ方だからこそ。その一風変わった淹れ方をご紹介します。
お湯をしっかり沸かし、細挽きのコーヒー豆をお湯の中に投入して煮出します。使っているホーロー鍋は、なんと創業当時から受け継がれているもの!
ポットにさらしをかぶせ、煮出したコーヒーを一気に流し込みます。
さらしをぎゅっと絞って最後の1滴まで抽出したら完成です。
この特殊な淹れ方は、水から煮出したコーヒーを粉ごとカップに入れ、上澄みだけを飲むトルココーヒーに由来しているのだとか。100年間、ずっと変わっていません。
平岡珈琲店の定番「ドーナツ・セット」
取材日にも続々とお客さんが訪れていた同店で、ほとんどの人がオーダーしていたのは、オリジナルブレンド「百年珈琲」(480円)と「百年ドーナツ」のセット、「Classic ドーナツ・セット」(600円)でした。
小腹を満たせるちょうどいい組み合わせは、やっぱり今でも同店の定番。ちょっとした休憩やランチの後のコーヒータイム、モーニングにもぴったりです。
グァテマラ産のスペシャルティコーヒーをベースにした「百年珈琲」。
「しつこく味が残るよりも、すっきりとした余韻を楽しんでほしくて」と小川さんが話す通り、深煎りコーヒーならではの苦味とコクを味わい、ほの甘いドーナツとのペアリングを楽しんだ後、喉元を通りすぎる頃には不思議なほどあっさりとしていました。もう1セット食べたいと思えるほど、するりと軽やかな余韻です。