[2024/04/04追記]※同店は2023年6月3日に閉店しました。
JR「御幣島駅」から徒歩約2分、雰囲気のある木の看板が現れます。この地に「わがし屋 よだもち」がオープンしたのは今から約7年前のこと。サラリーマン生活を送っていた與田光一さんが、“会社員ではなく商売をしたい”と実家の和菓子店で修行をし、約10年前に独立。3年後に移転を果たしました。
和菓子屋店主になるまで
子どもの頃から和菓子が大好きで……など相当な思いがあったのかと思いきや、「いや、とくに和菓子に興味があったわけではないんですよ。実家がパン屋さんだったら今頃パンを焼いていたかも」と、あくまで軽やかな與田さん。
もちろん修行時代の3年間は実直に和菓子に取り組み、基礎から応用までしっかりと習得。阪神「姫島駅」近くにあるご実家の和菓子店「よだ餅」の味作りとはひと味違う、独自の味を作り上げました。
提供するのは、あくまで“日日(にちにち)のお菓子”。お団子、おはぎ、季節もの。どれも一切気取りなく、でもきちんと洗練されていて、食べれば上質な気持ちへと自然に誘われる。毎日のお茶うけにぴったりのお菓子たちです。
奥深きお団子の世界
材料は意外にも「それほどこだわりはない」そうで、使用するのは一般的に購入できる国産の小豆やもち米。そこに與田さんならではのアレンジを加えることで、特別な風味や食感を演出します。
例えばお団子。主な材料は米粉で、もち米は使っていませんが、かといって硬いわけではなく、口の中で“もちりもちり”とほどよく残る、とても絶妙な塩梅なのです。
「なるほどこれが本物のお団子の食感か……」と妙に納得してしまう説得力がお団子一つひとつに宿っています。
看板メニューの「団子」は、あんこあり、あんこなし、あんこと雑穀を組み合わせたものなどをラインアップ。左から「みたらし団子」、「小豆こしあん」、「四季色団子」、「深煎り芥子の実」、「きな粉団子」。
出来合いのものを使うのではなく、大豆を煎るところからスタートするきなこ。深く煎ってほんのり苦味を加え、滋味深さを引き出した芥子の実。色合いで表現する四季。出来立てにこだわるみたらし団子。ひと手間を惜しまない1本にクラフトマンシップがのぞきます。
手土産にしたいおはぎや生菓子
「おはぎ」もまた、同店で味わいたい一品です。
砂糖の量を控えめにした甘すぎないつぶあんは、小豆のほどよい野趣を残しながらも後口はすっきり。蒸したもち米を潰しすぎず粒感を生かしたおもちと絡まり、噛み締めるたびに口福が広がります。
舌触り滑らかですっきり上品なこしあんのおはぎもまたおいしく、老若男女問わず愛されるのも頷けるところ。きなこのおはぎはあんこ入りで、つぶあんかこしあんかを選べます。
同店の主なメニューは、お団子と季節のお菓子。こちらはの写真は秋のお菓子です。
「栗きんとん」は毎年お世話になっている生産者さんから届いた栗を蒸し上げ、栗あんにして絞り、焼いたもの。
「ようかん」は秋空のイメージで色味を仕立てます。「そんなにこだわりはないんですよ」と謙遜する與田さんですが、可憐なルックスや、青とも緑とも言い表せない絶妙な色合いに目を引かれ、「食べてみたい!」と思わせる力があります。
誠実さと少しの遊び心と
おいしく仕上げるための工夫に手間を惜しまないのが「わがし屋 よだもち」のスタイル。作り置きはせず、オーダーが通ってから焼いたり合わせたり塗ったり、手を加えて提供するのもその理由からです。
「まずいものは作らない自信があるんです」と笑う與田さんの和菓子は、スタンダードでいてどこかスペシャル。忘れられないおいしさが、世代を超えて愛されています。
※新型コロナウイルス感染症拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉・密集・密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。