「wad cafe(ワド カフェ)」(大阪市中央区南船場)があるのは、Osaka Metro「心斎橋駅」から徒歩4分ほどのところ。高感度なショップが並ぶ南船場の、すてきな雑居ビルの2Fにあります。
きっと誰もが好きになる空間
お店に入るなり、静かでやさしい雰囲気に心を掴まれました。白い壁、コンクリートの床、風に揺れる薄い布、アンティーク家具。一つひとつの要素がとっても美しいのです。
オープンしたのはもう10年以上前のこと。欠けたり割れたりした器を漆を使って補修する「金継ぎ」の職人であった小林剛人さんが、器を使って何か体験できるような場所にしたいと、日本茶に特化したカフェを開きました。
「お茶には茶道や煎茶道など伝統的な側面があり、今後も大切に受け継がれていくべき文化です。ただ一方で、伝統がネックになって間口が狭くなっている部分もあると思いました。そこで、まずは“体験”を通じて日本茶の世界を少し知ってもらえたらと。その上で、日本茶をもっと学びたいと思っていただけるような、入り口となるお店がしたかったんです」と小林さん。
だからこそ、店内は多くの人が居心地が良いと感じるようなシンプルで気の利いた設えに。趣味で集めていた古物や、世界中から集めてきた家具などをセンスよく配置しながら、ひとつも押し付けがましくない空間へと仕上がりました。
その時の気分によって内装がどんどん変化していくのも楽しいところ。この日は床まで届きそうなランプや鉄の洗面器に生けた花など、個性的なアイテムが見られました。
あえて説明のない装飾を忍ばせることで、気づいた人が「これはなんだろう」と考えるきっかけになれば、との思いを込めます。
お抹茶を一服いただきましょう
お茶を点てる道具やその音、器の質感など、味わいだけでなく点てる時間の経過も楽しんでほしいと小林さん。「お抹茶」をオーダーすると、茶釜からお湯を注ぐ音、茶筅で抹茶を点てる手元の動きなどをただただ眺める、豊かな時間が過ぎていきます。
作家ものの器から自分で好きなものを選び、点ててもらったお抹茶。お茶請けには、ナッツやドライフルーフが添えられます。
抹茶は、京都・和束町のお茶農家から直接仕入れたもの。抹茶のやさしい香りや手にしっくり馴染む器のフォルムを楽しみつつ、ひと口。日々の疲れもさらさらと癒やされていきます。
「菊茶」と「ワドモナカ」
基本メニューは日本茶ですが、季節に応じてアジアのお茶もメニューに登場します。こちらは台湾の「貢菊茶(こうぎくちゃ)」(1,000円)。かつて小林さんが金継ぎの講師として台湾に訪れた際に知り合った、お茶の先生から送ってもらったものです。
甘味は「ワドモナカ」のほか、やきもちやぜんざい、一年中食べられるかき氷など。ちなみに同店の夏はかき氷が大人気。混雑必至なので、冬の落ち着いたタイミングでぜひご賞味あれ。
モナカは、玄米・フランボワーズ・いちごの3種類。おいしいつぶあんを見つけたことがきっかけで、この味を最大限に生かせる甘味をと仕立てられたものです。
では「貢菊茶」をいただきましょう。
透明の蓋茶(がいわん)の中で菊の花が開いたら湯ざましのうつわへ注ぎ、透明のグラスへ。菊茶の可憐な佇まいはもちろん、すべての道具や使い方も魅力的で、お茶時間ってこんなに豊かなのだと改めて感じます。
薄黄色のお茶の美しいこと! ビタミンA1やB1が豊富で目の疲れにも良いとされる「貢菊茶」。菊の花が持つ自然な甘味や香りも口いっぱいに広がります。
すてきな空間でとっておきの体験を
「モノを買うだけでなく、人が集まってストーリーを共有できるような空間になればという思いで、カフェもギャラリーも運営しています」と話す小林さん。モノの価値を大事にしつつ、そのモノが作られた背景にもこだわるのはそのためです。
うつわとお茶とすてきな空間。とっておきの体験をしに訪れてみてはいかがでしょう。
- 抹茶や日本茶などお茶文化が大好き
- アートな感性を養いたい
- ゆっくりとしたカフェタイムを楽しみたい
そんな人には特におすすめです。すてきな展示も随時開催されているので、ぜひチェックしてみてくださいね。
※掲載内容は取材時の情報です。ご利用の際は最新の情報を事前にご確認ください。
※新型コロナウイルス感染症拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉・密集・密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。