「dessert place SHIKISAI」(大阪府大阪市港区田中)があるのは、Osaka Metro中央線「朝潮橋駅」から徒歩6分ほどのところ。大きな公園に面する住宅街の道路に、さりげなく佇みます。
オープンしたのは2020年12月。都心部からは少し離れているにもかかわらず、京阪神の各地や関東からも訪れる人がいるほど今注目を集めているパティスリーです。
“SHIKISAI”という店名は、四季それぞれで楽しめる香りと彩りを大切にしたい、との思いから名付けられました。五感で堪能できるお菓子がずらりと並びます。
大阪・東京・フランスで認められた実力
同店のオーナーパティシエである平山信行さんは、大阪・東京・フランス各地の有名店でシェフパティシエやスーシェフ(シェフの2番手)として確かな実力を発揮してきた人物。
その経歴を聞くと、国内では「ザ・リッツ・カールトン大阪」、「ハイアット リージェンシー 大阪」、軽井沢のフレンチレストラン「Le Signe(ル シーニュ)」など。フランスではミシュラン星取りレストランをはじめ、ため息が漏れる名店ばかりです。
“世界最高”と言っても差し支えないほどのシェフたちのもとで、技術を学んだ平山さん。最終的には「ル・ムーリス」のシェフパティシエで、“世界ベストパティシエ”にも選ばれたセドリック・グロレ氏から「もう少しここで働かないか」と何度も引き止められるほどになりました。
「当時は、『ル・ムーリス』のレストランで働きたい!という情熱だけで現地へ行きました。でも、有名店なので志願する人も多く採用にはなかなか至りません(笑)。そこで何度もレストランへ足を運んでシェフがキッチンから出てくるのを待ち、電子辞書を片手に『ここで働かせてください!』と熱烈アプローチ。その甲斐あってようやく採用してもらえました」(平山さん)。
「現地では、技術を高めるのはもちろん、掃除をきちんとしたりキッチンの盛り上げ役になったり、言われる前に動いたりと“オレはできるヤツだ!”との主張が欠かせませんでした。結果、お給料も高めに設定してもらえましたし、引き止めてもらえるほどの存在になれた。本当にうれしかったです」(平山さん)。
手土産にぴったりのデザートケーキたち
これまで勤めてきたほとんどがレストラン形態とあって、スイーツはデセール(コース料理の最後に出される皿盛りデザート)が中心です。そんな平山さんが、いわゆる“街のケーキ屋さん”を選んだのは「デセールも持ち帰り用のケーキも、考え方は同じだと思った」から。旬のフルーツや食材を使ったり、ケーキ一つひとつの彩りを大切にしたりと、デセールをそのまま持ち帰りケーキに落とし込むのだそうです。
そんな平山さんのエスプリは、デザートケーキと名付けられたフィンガースイーツに如実に現れます。こちらは、なんと持ち歩ける「フランス産黒トリュフフォンダンショコラ」(1,300円)。松の木を粉砕して作ったというボックスに一つひとつ梱包されます。
チョコレート、黒トリュフ、小麦粉、オイル、そしてお塩。全てフランス産の素材を用いて仕立てます。平山さんも「これまで作った、どのフォンダンショコラよりおいしくできました」とにっこり。
冷やして、常温で、電子レンジで少し温めてと、温度の変化で味わいや口溶けがまるで異なるのが特長です。
とくに、温めていただいたときの食感と味わいが衝撃的。チョコがやんわりとろけつつ、生地の滑らかさとも溶け合います。今でもその時の味わいが鮮やかによみがえるほど!
クリアケース入りのデザートケーキは、断面の美しさから“地層シリーズ”と名付けられています。こちらは、地層シリーズのひとつ「苺のショートケーキ」。スプーンですくって食べるとあって、やわらかさにもこだわって仕立てられます。
「フランスと日本では気候が違うからなのか、同じレシピでも味の感じ方が全く異なりますし、国内でも地域によって好まれる味覚に違いがあります。大阪はどちらといえばふんわりとした軽さと、控えめな甘さに支持が集まる傾向です。苺ショートケーキをはじめ、どれもこの土地の人の口に合うようにレシピを考案しました」と、ショートケーキひとつとってもぬかりありません。
冷凍状態でいただく「アイスバターサンドクッキー」
平日限定の焼き菓子「アイスバターサンドクッキー」(1本550円)は、すてきな手土産を探している方にぜひおすすめしたいスイーツ。ざくっとしたクッキー生地で濃厚なバタークリームをサンドした逸品です。
“アイスバターサンド”なので、冷凍の状態で召し上がれ。ザクザクッと歯応えのいいクッキー生地、冷凍クリームならではの冷たさと軽やかさが格別です。しっかり焼かれたクッキー生地の香ばしさにもまたうっとり。
少し常温に置けば、バタークリームがほんのり溶けて濃厚さがぐっと際立ちます。残ったら冷凍庫で保管するのがおすすめ。変わらないおいしさがずっと続きます。
「薫製チーズケーキ」と「フルーツキャラメル」
ほかにも、台湾カステラをベースに考案した「無重力カステラ」や、「無重力カステラ」で生クリームをサンドした「小さな船」など気になるスイーツがずらり。中でも平山さんのイチオシは濃厚チーズケーキをハーブで短時間燻製した「薫製チーズケーキ」(ハーフサイズ1,980円)。かつてクリームチーズコンテストで3位を受賞した腕前を持つ平山さんならではの、アイデアに満ちたスイーツです。
広島県南部にあるハーブ農園「梶谷農園」から直接仕入れたローズマリーで短時間燻すことで、焼き目にだけ香りをまとわせます。香りが生きるよう冷凍で手渡されるので、まずは冷凍でぱくり。ふんわり抜けるハーブの香りとチーズの上品な味わいを楽しみます。
冷蔵庫で数時間置いて解凍し、自家製の「フルーツキャラメル」(1瓶660円)を添えていただくのも◎。じっくり煮詰めて引き出したフルーツのうまみが、チーズケーキにねっとりと絡みます。
一つひとつの素材にこだわり、香りと味わいを大切にしながら仕立てる、とっておきのお菓子たち。たったひと口でファンになる、そんな「dessert place SHIKISAI」にしかないケーキや焼き菓子に酔いしれてください。
- おいしいケーキに目がない
- 本物志向である
- すてきな手土産を探している
そんな人は、きっとお気に入りのお店になることでしょう。
※掲載内容は取材時の情報です。ご利用の際は最新の情報を事前にご確認ください。
※新型コロナウイルス感染症拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉・密集・密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。