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京阪「坂本比叡山口駅」から歩いてすぐ。
今回取材させていただいたのは、老舗そば店『本家鶴㐂そば』です。
歴史を感じる店構えに、思わず圧倒されます。
建物は築130年の入母屋造。
1997年に国の登録有形文化財に指定されています。
取材は、特別に個室「松の間」(要予約・部屋代別途要)でさせていただきました。
窓から見える石垣は、安土城・江戸城の石垣築城で活躍した石工集団「穴太衆」によるもの。
自然の石を積み上げていく独特の技法による、頑丈かつ美しい石垣です。
創業以来、300年以上守り続けている伝統の製法
坂本は、『比叡山延暦寺』の台所を預かる門前町として栄えました。
『延暦寺』へは昔より『京都御所』から度々御来賓がありましたが、山上のため、食物も非常に不自由だったため、累代祖先が蕎麦調整のため山上へ出仕されていたのだそうです。
また、比叡山で断食の行を終えた修行僧方が弱った胃をならすために、蕎麦を食したとも言われています。
そのような歴史を背景に、1716年、『本家鶴㐂そば』は交通手段もない時代に、『比叡山延暦寺』や『日吉大社』などへ何日もかけて各地から訪れる参拝者をねぎらいたいという初代の想いから始まりました。
同店の蕎麦は二八が基本。
手でこねて、さらしを巻いて、さらしの上から足で踏んでコシを出すのだそう。
創業以来、頑なに守り継がれている同店の手打ち製法。
蕎麦の太さがまちまちなのは、それこそ手打ちの証なのです。
“素敵なご縁が結ばれますように”との願いを込めて誕生した新名物「近江結味そば」(1,760円)
「創業300年を迎える際、『本家鶴㐂そば』に来たらこれを食べよう、という新名物を作りました」と話すのは、同店を運営する『株式会社本家つる㐂』統括部長の上延加奈さん。
「色々なものを少しずつ食べたいというお客様のご希望にお応えする形で、縁起の良い海老天、精進料理である生湯葉と生麩、消化に良い大根おろしを乗せた3種類のお蕎麦をセットにしました」(上延さん)。
素敵なご縁を結ぶ役に立ちたいという想いを込め、「近江結味(おうみむすび)そば」と名付けられた新名物は、若いカップルのデートから大切な接待・商談の場まで、早くも幅広く愛されているそうです。
まずはつゆをかけず、数本すすってみてください。
鼻に抜けるそばの香り、そしてうどんを思わせるほどの強いコシに感動しますよ!
最後に栄養たっぷりの蕎麦湯も提供していただけます。
熱々の蕎麦湯が体に染み渡る幸せ、ぜひ堪能してみてください。
長きにわたって愛される理由は、心を尽くした丁寧なおもてなしにも
特筆したいのは、店員さんの対応の素晴らしさ。
私は取材で伺ったのですが、どのお客様に対しても同じように、丁寧に心からの接客をされていました。
伝統の手打ち製法に徹底的にこだわる職人さんが、蕎麦の味で満足させる。
笑顔を絶やさない接客担当の店員さんが、心を満たす。
『本家鶴㐂そば』が300年以上もお客様から愛される理由は、蕎麦の美味しさ以外にも、ありました。